ミャンマー 19世紀末の銀細工箱①

ミャンマー 19世紀末の銀細工箱① 三毛イキルです。 これは 20年以上前に、タイのバンコクで入手した隣国ミャンマーの銀細工箱です。 私がアジアの骨董を収集するきっかけとなった逸品です。 入手した時は、表面の細工が素晴らしく、何のために使われたものか、全くわかりませんでした。 そこでインターネットで類似の骨董銀細工の箱を検索しましたが、日本語のサイトでは良い情報がありませんでした。 そこで、タイやミャンマーのアンティークを扱っている欧米のウェブサイトにアクセスしました。その結果、銀細工箱の名前がわかりました。 これは西洋人が『Silver betel container』または『Silver Opium Box』 と呼ぶものだそうです。 Betelは、ビンロウ。Opiumは、東南アジアの芥子から作られたアヘンですね。 昔はアヘンを入れていたのかもしれませんが、20世紀に入って、この銀細工を受け継いだ人は別の使い方をしていたようです。 箱の底には、白い石灰がこびりついて変色した残存物が残っていました。前の所有者は、この銀細工箱に檳榔用の石灰を入れて、日常的に使用していたようです。 ミャンマーでは檳榔子(ビンロウの実)を噛むときに石灰を使用する風習があります。今でもインドや台湾では、檳榔を噛んでいる高齢者を見かけます。 これは、江戸時代のタバコ入れや中国の鼻腔壺のように、富裕層が自分のステータスシンボルとして周囲に誇示するために、特別に職人に作らせた嗜好品の箱だと思います。 細工が素晴らしいです。店で一番質の良いものを見せてくれと店主にお願いしたところ、これが出されました。 戦前のビルマで、19世紀末から20世紀初頭に少数民族により作られた品だそうです。蓋には花柄が中心に描かれ、花の蜜を吸いにきたハチドリを模った鳥が描かれています。 人魚が踊っているような絵柄もあります。虎や蛇をモチーフにした絵柄もあります。 ネズミや象の絵柄もあります。日本の干支とは微妙に異なっているのが、面白いですね。 唐草模様の中に、ユーモラスな動物たちが魅力的に動いています。残念ながら、私が好きな猫はいませんでした。 (次回へ続く)