投稿

ラベル(ヴィンテージ品)が付いた投稿を表示しています

(実話)インドを旅して手に入れた骨董品 その1

イメージ
三毛は、骨董が好きである。 プロの古物商ではないので、利益を得るために、次の買い手を気にする必要はない。 だから、海外旅行中に自分が良いと思ったものは、どんなに高くても手に入れるように、心がけている。 資産運用に失敗したときには、今までの収集物を手放すかもしれないが、今のところは大丈夫のようだ。 とはいえ、他の日本人バイヤーが足元を見られることのないように、あらかじめ相場を下調べしてから、値段交渉をして買うようにしている。 eBayなどの海外オークションサイトを参考にすることが多い。 骨董商(売り手)との交渉も、嫌なことは時々あるが、大抵は旅の良い思い出となることが多い。 特に自分の代で創業した骨董商は、プライドが高く世間のレールから外れた、変わり者が多い。 頑固な人、せっかちな人、他人に対する好き嫌いが激しい人が、多い印象を持っている。 私と同類なのだ。 だから三毛が上客だとしても、彼らの気持ちを損ねることは悪手である。 本当に欲しいものがある場合、決して表情に出さずに下手に出ながら、値段交渉を行うことが多い。 これは、インドのマイソールで手に入れた品。 小指ほどの大きさの、細密な銀細工の箱。 インドの携帯ピアノ、ハルモニウムをかたどった小箱である。 インドで有名な針金を使った銀細工Silver Filigree Workと呼ばれる逸品。 Filigree Workは、主にオリッサ州の民族工芸や、アンドラプラデーシュ州の地方都市で、昔から作られている。 これは戦後に作られたもので、骨董と言えるほど古くはない。40〜50年ぐらい前のものと店主は言っていた。 こういう細工の細かく、見て使って楽しめる綺麗な貴金属工芸品が、三毛は大好きなのだ。 三毛イキルのプロフィール 外こもり写真(フォトAC   全てダウンロード無料) https://premium.photo-ac.com/profile/24044959

ミャンマー 骨董品の漆器を探して バガン⑩

イメージ
 ミャンマー 骨董品の漆器を探して バガン⑩ この桶の持ち主は、彼女の祖母でした。いつ頃からあるものか、孫でツアーガイドをしている女の子に通訳してもらい、祖母に質問しました。 すると、祖母は糸繰車の手を休めることなく、30年〜40年ほど前に、親戚の漆器職人から貰ったものだと言いました。 この桶は、骨董品の定義である100年以上前のものではありませんでしたが、紛れもなく由来のわかる一点物です。 実用性を兼ね備えたヴィンテージ品としての価値が十分にあります。日本人である私の感性に合った逸品であると判断しました。 しばらく織物や農作物に関する雑談をして、家族と仲良くなると、祖母が私のことを聞いてきました。 日本から来たこと、骨董収集が趣味なこと、漆器作りが盛んなバガンで一日中良い骨董品探したが見つけることができなかったこと。 そしていくつかの偶然が重なって「たった今」、その逸品に出会えたこと、を祖母に伝えました。 彼女は黙っていましたが、微笑んでいました。普段使いの漆器を日本人から褒めてもらったことがとても嬉しいようです。 そこまで欲しいのならと、私にこの漆器を売ってくれました。 彼女との出会いに感謝して、この漆器を譲ってもらえたお礼に、十分な対価を米ドルで支払いました。 この漆器は、私の実家の台所にあります。家庭菜園のキュウリやトマトなど農作業の収穫物を入れる器として、とても重宝しています。 思いがけない偶然と地元人との交流が骨董というモノに魂を吹き込む、それが思い出となって骨董を更にいとおしむ。名のある伝来品でなくても、思い出の詰まった逸品をいつも手元に置いて、当時のことを思い出しながら大切に使う。骨董探しの旅の醍醐味だと思います。 (終)

ミャンマー 骨董品の漆器を探して バガン⑨

イメージ
ミャンマー 骨董品の漆器を探して バガン⑨ 彼女の家に招待され、家の中へと入りました。 周りの農家と同じように通気性に富んだ、平屋建ての木造家屋です。 作りは母屋と台所の2部屋です。彼女は、レンガ作りの竃(かまど)にある薪に火をつけて、鉄瓶でお茶を出すためのお湯を沸かしています。 母屋では彼女の母親と祖母が、収穫した綿花から糸を作る糸繰りの作業をしています。作った糸は、自然の染料で染めるのだそうです。 使用されている糸繰車は、日本の江戸時代から使われてきた物と同じ形をしています。左手で糸車を回しながら、右手に持った綿花から糸を一本の線にして、木枠に巻き取る構造です。 戦前の日本で見られた懐かしい光景だなと思いながら見ていたところ、部屋の奥に年季の入った漆器が置かれていることに気づきました。 ちょうど私の目に止まった瞬間の写真です。思わずシャッターを押しました。 簡素で何の装飾もない、バケツを一回り小さくしたような日常使いの漆器です。 長年使い込まれて、表面の赤漆がすれています。地肌の黒漆が見えており、和歌山県の根来塗りに似た、何とも言えない風格が漂っています。 大きさは両手で抱えられるぐらいの桶でした。中には細かな木屑を干したものが、入っています。 この木屑を熱湯で煎じて、着色をするそうです。 突然脳みそからアドレナリンが出て、私の物欲を刺激しました。これ欲しい!と思いました。 (次回へ続く)