(実話)インド アジメール 若き資本家が誕生した瞬間を見た

イスラム教の聖地アジメールでの、忘れられない光景の話。

巡礼者に金をせがむプロの乞食達を見た後に、宿のある隣町プシュガルに帰る途中の出来事。


路上で一人の少女に出会った。




彼女は路肩に白いビニールシーツを広げて、中国製の安いおもちゃを並べて売っていた。


自分が座るビニールシーツは、ない。


彼女は炎天下の中、舗装もされていない熱く砂利だらけの地べたに、そのまま座っている。


明らかに売り物の商品の方が、自分よりも大切だと考えているのが、よく分かる。


そして、道ゆく人たちに声を張り上げて、自分の大切なプラスチックのおもちゃを売り込んでいた。


三毛は、彼女が今まさに商売人として、第一歩を踏み出そうとしているのだと気づいた。


そして、大いに感動し、涙が出そうになった。


前回の聖廟の前にたくさんいた乞食と、おもちゃを売っている少女との違いがわかるだろうか?




それは売り物の商品を仕入れて、利鞘を乗せて販売するという、経済行為をしているかどうかである。


つまり資本の蓄積が、できているかどうかの違いだ。


乞食はプライドを捨て、自分自身を見せ物にして、金を稼いでいる。


だが売り物の資本を蓄積し増やしていくことはできない。


物理上、商売道具である自分の体を、増やすことができないからである。


一方、おもちゃ売りの少女は、客と対等な立場で、売り物の商品や量を、今後増やすことができる。


自分のプライドを捨てて、他人から施しを受けて生きていく必要もない。


おもちゃが売れれば、取り扱いの品揃えを増やして、資本の回転率を上げることが可能だ。


きっと彼女は将来、路上暮らしから抜け出して、自分の店を持つことになるだろう。


ビニールシーツの最善列に、ゼンマイ仕掛けの白いライオンが置いてあった。


それはまるで、資本家として歩み始めた彼女を象徴するような品物だと、三毛は思った。


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