(実話)インド プネ 飼い犬が野良猫に出会った時の話
プネの飲食店が立ち並ぶ路地で、夕食を立ち食いしていた時に、1匹の野良猫が三毛の近くにやってきた。
茶トラのオス猫で、大人の体格だ。色ツヤから推測して、2〜3歳ぐらいの猫だろうか。
周りの人間に媚びることなく、床に落ちたチキンの切れ端やパン屑などを見つけて、一心不乱に食べている。
インドで野良猫を見る頻度は、他国よりも少ないと、多くの外国人旅行者が言う。
三毛も同感だ。港町のムンバイや、ハイデラバードなどムスリム教徒の多い都市でも、たまに猫を路地裏で見かける程度だ。
人間をひどく警戒していて、猫好きの私を見つけても、すぐ逃げる。
ニューデリーも含めて、他のインド都市では野良猫を見かけることは、滅多にない。
ヒンドゥー教は、猫は神聖なネズミを食べる悪魔の化身と考えられているからだ。
ヒンドゥー教徒の猫に対する扱いは、ゴキブリや害虫と同じ感覚である。
一方、猫好きが多いムスリム都市では、猫は悪いネズミを食べてくれる良い生き物という扱いをされている。
日本や仏教国のタイ、ベトナムといった他の東南アジアでも同様だ。
インドは他の国のように、野良猫がラクでのんびりと生きていける環境ではないのだ。
案の定、三毛が食べていたチキンシュワルマの店主も、茶トラが店に近づこうとすると、即座に棒で地面を叩いて追い払っていた。
猫好きの私がチキンの切れ端を、茶トラにやると足元までやってきた。
私を恐れることなく、足元でチキンをむしゃむしゃと食べている。
3分後、裕福そうな若いポニーテールのインド女性が、1匹の大きなラブラドール犬を連れて、この店にやってきた。
テイクアウト用に同じチキンシュワルマを注文して、出来上がるまでの間、店先の椅子に座った。
するとラブラドールの挙動が、明らかにおかしくなった。
何かに怯えて小さな悲鳴をあげ、飼い主の後ろに隠れ始めたのである。
三毛の足下にいた茶トラの猫が怖いのだ。
女性もすぐに飼い犬の名前を呼んで、勇気づけているが、全く効果がない。
犬の悲鳴は止んだが、目が完全に宙に浮いている。飼い主のリードがないと、すぐに逃げ出しそうな雰囲気だ。
三毛が面白がってカメラを向けると、カメラのレンズまで怖いのか、視線が見えないように椅子の間に隠れてしまった。
一方の茶トラ猫は、そんな犬を見て悠然としている。まるで笑っているようだ。
私はお前は強いやつだなーと言って、もう一切れチキンをこの猫にあげた。
ついでに頭を軽く撫でると、得意そうな顔をする。
おそらく、ポニーテールの女性はよくこの店に買いに来るのだろう。
過去に、この茶トラが犬と喧嘩して、勝敗がついていた感じだ。
茶トラ猫は基本人懐っこい性格だ。
それでも縄張りを維持する野良猫の場合、気性は荒く、喧嘩するときは誰であろうと一歩も引かない。
自分よりも倍以上サイズが大きい、大型犬のラブラドール相手でも、こんな感じである。
相手がクマだとしても、猫パンチで追い払ってしまいそうな風格を持っていた。
相手をよく観察して、勝てると思ったらどんな相手でも一歩も引かない、精神力や胆力こそが大切なのだと、この猫から学んだのである。
三毛イキルのプロフィール 外こもり写真(フォトAC 全てダウンロード無料)
https://premium.photo-ac.com/profile/24044959
コメント