インド ベンガル州北部 シリグリ 列車の釣り銭詐欺
コルカタの街は、すっかり冬となり、宿の冷房もいらなくなった。
三毛は、ハーレ・クリシュナ・ハーレ・ラーマで、有名なマヤプールのクリシュナ寺院で数日過ごし、クリスマスと正月をコルカタで迎えた。
クリスマスのイルミネーションは、綺麗で街は賑やかだ。
コルカタにはそれから、10日ほど居たが、大気汚染は酷くなり、マスクをつけていても、すぐに外の表面は汚れて黒くなってしまう。
そろそろ空気の綺麗な田舎町に、避難するタイミングだ。
新年を迎えて、今回のインド旅行の目的である、東北部への旅へと向かおうと考えた。
その東北部に行く前に、トイトレインで有名なダージリンや、シッキム州をまだ一度も訪れていなかったことに気づく。
そこで、東北部の玄関口のシリグリまで、丸一日かけて2等のソフトシート列車で、行くことにした。
列車はコルカタのチットプル駅を朝9時発、シリグリには19時頃に到着する。
所要時間は10時間、料金はわずか256ルピー(500円)。
昼寝をしたり、スマホをいじったりして、時間を過ごす。
持参した昼飯を食べて、午後になると、私は喉が渇いたので、チャイを飲みたくなった。
チャイは、10ルピー(17円)。
急行列車だと、インド国鉄の販売員のみだが、ローカル列車だと、民間のチャイ屋が乗り込んでくる。
そして無許可で勝手に商売している、民間のチャイ売りの方が、味は格段に美味しい。
早速チャイを一杯頼んだが、50ルピーしかなかったので、お釣りを待った。
でも、30代ぐらいのコルカタ男性は、お釣りが今はないという。
戻ってきたら、お金を払いますというので、少額だし、その若者を信じて帰りを待った。
後の車両から帰ってくるだろうと、彼が帰ってくるのを待っていた。
20分して、彼が戻ってきたので、釣り銭を返すように、私はそっと声をかけた。
だが彼は一切聞こえないふりをして、先頭の列車に逃げていった。
それから1時間たっても、戻ってこない。
途中の駅で、降りて逃げたのだろう。
さっきの素ぶりを見ても、これは確信犯で、私は騙されたのだった。
被害額は、わずか40ルピー(70円)。
お金の問題ではない。
少額でも、インド人を信用して騙されたので、そのことに、私は無性に腹が立った。
列車は、定刻の19時30分に、シリグリ駅に到着した。
シリグリは、シッキム州とインド東北部・インド本土と結ぶ回廊の中心都市である。
インド人、チベット人、ネパール人、いろんな民族の身なりや、顔つきをした人が、プラットフォームを降りていく。
駅から外に出ると、日は暮れて、ローカルバスは走っていなかった。
郊外の宿までは、だいぶん遠いが、歩いて行けない距離ではない。
でも重い荷物があるので、タクシーに乗りたい。
数少ない外国人の三毛を見て、3輪タクシーの運転手が群がってくるが、宿までは300ルピーも払えという。
キロ数から計算して、100ルピーが宿までの相場だ。
またしても、ぼられるのが嫌なので、暗い夜道を歩いていく。
すると後ろから、トヨタの立派な乗用車が停まった。
日本人とよく似た中年シッキム男性が、一人で運転していた。
親切心から、方向が一緒なので、車に乗って送ってあげるという。
人望のある知的な顔つきだ。まず強盗に遭う危険性はないと見た。
そこで、ありがたく申し出を受けることにした。
20分ほどして、宿の前で下ろしてくれる。
三毛はお礼を言って、車を見送った。
禍福は糾える縄の如し。
騙されても、すぐにその後で、私を助けてくれる人がいる。
世の中とはこのように、善と悪が書き換えられていくのかと、改めて三毛は感じたのである。
これをインドの人は、カルマと呼ぶのだろう。
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