(実話)インド 若者の恋愛とカースト制度の壁
バーダーミから、世界遺産パッタダカルの遺跡に向かう市バスで体験した話。
大学生ぐらいの年代だろうか、男はナイキの帽子にTシャツとジーンズ、女は派手な黄緑色のワンピースを着ている。
サリーを着た地元民とは異なる格好をしていて、よその地域から来たようだ。
完全に自分達だけの世界に入っていて、実に微笑ましい。
周囲のインド人とりわけ高齢の女性は、このカップルを見て、顔をしかめている人もいたが、彼らは全く気にしていない。
お節介焼きの老人・三毛、好奇心と悪戯で、ちょっかいをかけたくなった。
女の子の笑い声が静まった時に、後ろからどこへいくのかと声をかけた。
すると、邪険にするそぶりもなく、世界遺産のパッタダカルへいくという。
どこから来たのかを聞くと、バンガロールから旅行に来た大学生とのこと。
付き合って、まだ3ヶ月だという。一番楽しい頃だ。
女の子の好きな日本アニメの話をして盛り上がった後に、彼らの身の上話を聞いた。
男の両親はこの恋愛に大反対しているという。このデートもお忍びだそう。
理由はただ一点、女の子のカーストが低すぎるからだという。
男の家族のカーストは最上位のバラモン、女の子は、かなり下の方のカーストらしい。
男は結婚を真剣に考えているという。
彼女もそれを望んでいるのだが、絶対に認めてくれなくて悩んでいるとのこと。
身分制度のない日本では、あり得ない光景である。
両親は同じカースト同士のお見合い結婚だったから、価値観が僕らとは全く違うんです、と男の子は言う。
三毛は思った。
同じカースト同士なら、経済力も価値観も似たもの同士だから、結婚しても違和感を感じることは少ないだろう。
両親の言うことにも一理ある。
だが結局は世間体を気にして、あなたの親は古い慣習に囚われているだけだ。
カーストに関係なく、お互いの人間性が合うかどうかが一番のポイントだから、両親の言うことは信じず、自分の本心に従えばいいと。
それを彼らに伝えた。それを聞いて、男の方は少し困った顔をし、女の子はとても喜んだ。
ローカルバスはパッタダカルに到着し、三毛は彼らにさよならを言って、カップルと別れた。
その後、あのカップルはどうなったのだろうか、今でも私は彼らの幸福を願うばかりである。
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